1984年生まれ、東京都出身の長久さん。
大学卒業後に大手広告代理店に入社し、
広告プランナーとして活躍され、2017年には、
短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』が
日本人として初めてサンダンス映画祭で
短編部門グランプリを受賞。
2019年には長編映画デビュー作
『ウィーアーリトルゾンビーズ』で
サンダンス映画祭・審査員特別賞を受賞しています。
現在も広告代理店に勤務をされている長久さんですが、
もともと映画が好きで、映画の専門学校にも通い、
製作をおこなっていたとのこと。
「学生時代に作ったものが、
それほどパッとしなかったので、
夢を諦めて、広告代理店に入って、
最初は営業職をやったりしていました」
映画を撮るきっかけったのは、仕事で体調を崩し、
自分のやりたいことを見つめ直したことだったんだそう。
「自分の人生で、自分が一番美しいと思う
映画を作ってみたいっていう思いがあって、
有給休暇の10日間で
『そうして私たちはプールに金魚を、』を
自主映画として作ったんです。
それがたまたま大きな映画祭で
グランプリいただいたので、
今の道を歩み始めました」
映画に目覚める前は、音楽を職にしたいと
考えていたこともあったと語った長久さん。
「大学時代はジャズの部活に入って、
ビッグバンドでサックスを吹いていたんです。
ちょうどスカとかも流行ったので、
スカバンド組んでみたり、
そんなことはしていました」
初めて買ったCDはとんねるずの
『ガラガラヘビがやってくる』
お笑いが好きでこの1枚が音楽への入り口となり、
そこからTHE YELLOW MONKEYを
好んで聴くようになったと話しました。
「コピーバンドを友達とやりましたね。
当時ヴィジュアル系とかも流行っていて、
影響受けて、お母さんのドレスを借りて、
女の人の服を着てバンドやったり、
文化祭で演奏したりしました」
THE YELLOW MONKEYが活動を休止し、
再結成をした時には、仕事で共演を果たし、
感無量だったとのこと。
「会社の中で別の人が担当するらしい、
っていう噂を聞いて、
その人の先輩のデスクに行って
『絶対にこの会社で一番詳しいのは私です!
やらせてください!』と言って立候補して、
やらせてもらいました。
その時キャラクターを作って、
声を吉井さんが尊敬している
美輪明宏さんにお願いしたんです。
音の録音する時にブースに美輪さん、
後ろに吉井さん…尊敬する人に挟まれすぎて、
あの声が出なくなりましたね。
人生一番緊張した瞬間でした」
ロックやポップスを好んでいたところから
ジャズも聴くようになったのは、
作曲家・編曲家のギル・エヴァンスがキッカケだったそう。
「僕が行った大学の部活が特殊なんですけど、
ギル・エヴァンスを専門にやっている部活だったんです。
カオスで、へんてこな、エレクトロのジャズなんですけど、
『奇妙な音の圧に感動というものがあるんだ』
っていうことを知って、本当にまだまだ
知らないものがあるんだなと。
そこからジャズが面白いなって思いました」
しかし自身が思うほどサックスの技量が伸びず、
音楽の道を諦め、他にその熱量を向けるものを
探していたところ、映画がピッタリとハマったんだそう。
「フランス文学科卒なんですけど、
授業でシュルレアリスムを学んだんです。
ルイス・ブニュエルの作品などを学問として知って、
『僕が知ってた金曜ロードショーの映画とは違う』と。
そこから映画にアクセスし始めました。
僕はその邦画の監督ではあるんですけど、
シュルレアリストとして映画を
作りたいっていうのは根底にはあります」
映画ではジャン=リュック・ゴダールや
リチャード・リンクレーターの作品にも
影響を受けていると述べました。
音楽が効果的に使用されている
長久さんの作品ですが、
音楽が使われている映画では
ディズニーの作品を好んでいるそう。
「『アリス』や『リトル・マーメイド』もそうですが、
特に『アリス』は、すごく奇妙で、
不条理やシュルレアリスティックな難しい話なのに、
音楽を通すことで、スッと子供でも楽しめる形。
音楽と映像、言葉を全部使った、
理想的な形だなと思っています。
あとはティーンエイジャーを描いた映画が
本当に大好きなので、例えば、
相米慎二監督の『台風クラブ』。
例えばBARBEE BOYSの激しい形を、
鬱屈とした若者たちの感情にぶつける爆発力…
その監督の掛け算のやり方が、
本当にドキドキするなと思っています」
長久さんは映画を作る際に、
エンドロールで流れる楽曲の
歌詞から書き始めるとも述べました。
ライブにもよく足を運ぶという長久さん。
印象に残っているライブについて伺うと、
まずはNATURE DANGER GANGについて語りました。
「2016年頃のライブが僕の人生を変えたライブ。
本当に変わったバンドなんですね。
もう全裸に近い感じで、テクノパンクと言いますか、
そんな音楽をやっていて、
当時、まさに映画を作る前ですね、
仕事を真面目にやりすぎて、
ちょっと辛いなと思ってた頃に、
彼らが『俺たちは、ひょうきんさふざけてる』
っていうフレーズを絶叫しながら、
死んでもいいぐらいの気持ちで
絶叫しながらライブをやっていまして、
本当に下手くそで、カッコよくないんですけど、
すごくエネルギーを感じて、
『僕はこのように生きねばならぬな」と思いました」
もうひとつ挙げたのは、元たま・石川浩司さんの演奏。
「2年前に『30人30曲』という、
30人のミュージシャンがそれぞれ
1曲だけ同じギターで弾き語りをするライブがありまして、
そこで石川浩司さんが『ラザニア』という曲を
歌っていたんです。本当に素晴らしい曲で、
聴いた日から、その曲のことずっと考えてしまう。
いろんな子がいても、どんな人も
「生まれて良かったね」ということを
繰り返す曲なんですけど、本当に僕が
映画で伝えたい全てが入っているなと。
この曲は最新作『炎上』で使わせてもらって、
ちょうど脚本を書いている時期に、
難しい題材だったの困っている時に、
この曲を真ん中に置きたいと思いました」
自身の作品での音楽のあり方についても語りました。
「感情や題材、物語をステレオタイプに
表現しないようにしたいっていうのは思っています。
悲しい時に、より悲しくさせるよりもフラットに、
良いものか悪いものかを提示しないようにしたいですね。
バラエティ番組の嘘の笑い声みたいな役割を、
音楽に背負わせたくないなって。
まあ音楽が好きだからこそですけど、
観てる方にジャッジを委ねられるような余白で、
お送りできたらなと思っています」
今後、お仕事で共演したいと思う
アーティストはいらっしゃるのでしょうか。
「音楽はもちろんですけど、
僕はミュージシャンの演技が大好きで、
例えば宇多田ヒカルさんとか、
あとアメリカにいらっしゃる、
メイ・シモネスさんに演技をしてもらいたい…
メイ・シモネスさんはライブ映像とか
インタビュー映像とか見てるだけでワクワクしちゃって、
何の許諾も、何の会話もしてないのに、
勝手に当て書きした短編の脚本を書いちゃいました」
長久さんは他にもHANAの名前を挙げ、
いずれミュージカルを作ってみたいとも述べられました。
さて、この番組では、
「大人の☆生 サッポロ生ビール黒ラベル」を
飲みながら音楽トークをしていることにちなんで、
ゲストの皆さんに「大人になった1曲」を伺っています。
この質問で長久さんが選んだ1曲は、
サド・ジョーンズ&メル・ルイスの
「A Child is Born」でした。
「僕が大学生の頃にジャズの部活の先輩が、
『名曲だから聴いてみろ』と。当時ラジカセで
初めて聴いたんですけど、
感動をしてなんか泣いちゃったんですよ、本当に。
メロディとか、ピアノの音色、
ノイズも含めて完璧に感じて、
賛美歌を聴いたような、神聖さを感じて泣いてしまって。
それから時が経って、第一子が生まれた時、
まあ27、8歳だったんですが、病院で生まれた瞬間に、
この曲が脳内で爆音で鳴りまくったんですよ。
『“A CHILD IS BORN“なんだ』と思って、
そこからシュルレアリスティックなものが
映画のベースにありつつも、
子供のために映画を作りたい、
自分のスキルを使っていきたい、
という方向に変わりました」
さて、長久さんが監督・脚本を手がけた新作映画
『炎上』が先週末から公開されています。
両親に厳しく育てられ、自身の感情を
表現することが苦手な少女が家を飛び出し、
たどり着いた東京・歌舞伎町。
さまざまな人たちとの出会いを経て、
居場所を見つけたはずの彼女が、
“炎上”事件を起こすまでの150日間の物語…
主人公を森七菜さんが演じ、アオイヤマダさん、
一ノ瀬ワタルさん、曽田陵介さん、
高橋芽以さん(LAUSBUB)などが出演されています。
「皆さん接触していると思いますが、
SNSとかで、“トー横キッズ”と言われる
彼ら彼女たちの切り抜かれた動画を
見ることもあると思うんです。
少し過激な立ち振る舞いが
切り出されたものだと思うんですけど、
僕はそれって、きっと彼ら彼女らの日常の
0.1%に過ぎなくって、
99.9%の他のことがあるはずなのに、
と少し違和感を感じたんです。
映画の企画がある前に、
実際にどういうことを思っていたり、
何を感じてるのか、話を聞きたいなと
思ったっていうのがきっかけです。」
本作が初の単独主演作となった森七菜さんについても。
「森さんにオファーをした時は、
まだ『国宝』も『フロントライン』も
『ひらやすみ』も、作品が出る前で、
当時は清純というか、クリアな役を
たくさんやられてたんですけど、
バラエティ番組に出る時の振る舞いが、
すごくエネルギッシュで、
熱量が高い方なんじゃないかなと思っていたんです。
今回の主人公のじゅじゅは、
自分の言葉がうまく外に出せないけれど、
本当にたくさんのことを考えている子で、
森さんを思いついた時に、ぴったりではないかと。
まあすごく難しい、激しい物語ですが、
オファーさせてもらいました」
最後にリスナーへメッセージもいただきました。
「本当に私自身が人生をかけて作った映画です。
でもきっかけは、
素晴らしい森さんの演技を観に行く…
そういうことでももちろん良いので、
音の設計や絵の設計、
劇場で一番届くものになってますので、
ぜひ、映画館で観ていただけたら嬉しいです」
映画『炎上』の情報はこちらから
次回4月25日は、
L'Arc-en-Cielのヴォーカリストでソロアーティスト、
HYDEさんをお迎えします。初めて観に行ったライブ、
10点満点だと思うアルバム、影響を受けたマンガなど、
じっくりお話を伺います。
番組初登場となるHYDEさんとの音楽トークをお楽しみに!

田庄のやきのり
大田区にある海苔屋さん『田庄』のやきのり
長久さん曰く、
『めちゃくちゃ美味しくて、
もうこの海苔以外食べれません』とのこと。
長日さんさんのご友人である映画監督
ポン・ジュノさんも絶賛した1品です。

WE ARE LITTLE ZOMBIES
/ LITTLE ZOMBIES
ガラガラヘビがやってくる / とんねるず
楽園 / THE YELLOW MONKEY
ロザーナ / THE YELLOW MONKEY
Voodoo Chile / Gil Evans And His Orchestra
Pay Attention / In a World of My Own
/ Kathryn Beaumont
暗闇でDANCE / BARBEE BOYS
俺たちは.... / NATURE DANGER GANG
ラザニア / 石川浩司
Dumb Feeling / Mei Semones
BAD LOVE / HANA
A Child Is Born /
Thad Jones,Mel Lewis Jazz Orchestra
合唱曲「光」/ 白戸秀明
new morning / 岩井莉子
mates / 岩井莉子
ピアノソナタ第21番 / 白戸秀明
炎上 / 窓辺リカ
This Is Not America
/ David Bowie,Pat Metheny Group
長久さんとのトークを受けて
クリス・ペプラーが
選んだ1曲はこちら!